子規
ここのところ子規の随筆を読んでいる。読む楽しみそのものを与えてくれる。
むろん病牀六尺の身の上であるものの、子規の器量の大きさはとてつもない。
それにもまして批評の眼力とまた自らの日常の周辺への彼の眼差しが余りにも新鮮だ。弛まぬ深さと自由な拡がりのみずみずしさはどこからくるのだろうか。
病める枕辺に巻紙状袋など入れたる箱あり、その上に寒暖計を置けり。その寒暖計に小き輪飾をくくりつけたるは病中いささか新年をことほぐの心ながら歯朶の枝の左右にひろごりたるさまもいとめでたし。その下に橙を置き橙に並びてそれと同じ大きさほどの地球儀を据ゑたり。この地球儀は二十世紀の年玉なりとて鼠骨の贈りくれたるなり。
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人に物を贈るとて実用的の物を贈るは賄賂に似て心よからぬ事あり。実用以外の物を贈りたるこそ贈りたる者は気安くして贈られたる者は興深けれ。今年の年玉とて鼠骨のもたらせしは何々ぞ。三寸の地球儀、大黒のはがきさし、夷子の絵はがき、千人児童の図、八幡太郎一代記の絵草紙など。いとめづらし。此を取り彼をひろげて暫くは見くらべ読みこころみなどするに贈りし人の趣味は自らこの取り合せの中にあらはれて興尽くる事を知らず。年玉を並(なら)べて置くや枕もと
〜墨汁一滴より〜
しばらく丹念に丁寧に読んでみたい。
で今、子規がいたらどんなブログ書いただろうか?とふと思った。(^_^)