emmaus.hatenablog.jp

“だれ一人自分のためにだけ生きている人はいない”

ジョーン・ブリヤンの色


風景を描くことに新しさはいらない。
ホルペインのケーキカラーの滲みは悪くない。
生めかしい風も描写しませふ。


事件(こと)は誰も分からぬ処で起こるのではない。
注文を云い寄る店員に催促され
たのんじまったコーラ。
スモークグリーンの瓶のなんと美しいことでしょう。
チェスゲームのボクらの熱さを少しなだめてくれる。


だから寝入りの時、
黒い睫毛の端に、〈あるもの〉が
そっと止まっていることさえある。
あるいは寝息のたなごごろのなかで
〈あるもの〉が じっと時のしじまを見つめている。


すっかり煙草のヤニで
指の爪も黄色になっている。
そこにジョーン・ブリヤンの顔料を少し。


春の午後を辛抱強く堪えるのも
いいと思えてくる。
ボクらにとってこれに
替わるものは他にない。
出来る事からやればいい。
もうひとつコーラのお代をしょうと手を振った。
きっとあの店員はしたり顔でやってくるにちがいない。