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“だれ一人自分のためにだけ生きる人はいない”

老いその生きる場

確かに生は跡形もなく消えてゆく。だが老いあるいは死は誰も見ぬ振りして忌みすることだろうか。

人生前半の課題は挑戦であり、後半の課題は別離であるというテーゼがある。
中井久夫 「世に棲む老い人」 老いの発見4 岩波書店

別離とて若さの領野にあり、挑戦とて死の間際にある。「人生は一発勝負だ。あんた、だらだらするんじゃないよ。」という声がボクの耳に響いた。驚き。わたしの担当の全介助を必要とする老女がベットの上に居る。一瞬その顔を見たが、もういつもの元の小さな寡黙な人となって虚ろに天井を見ている。ボクの幻聴か。その後、おやつの食事介助時、ほんのりと、「お・い・し・い」と呟いた。「カスタード好き?」と訊くと、「おいしいはいい」と言葉が返ってきた。「明日も食べよう」と云うと、「うん」と肯く。明日に挑む明るい声だ。