Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

幸福書房の店じまい

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いい本を見つけた。原研哉著「白百」。内容は色の白に関する心象等々。
この本は私鉄沿線の小さな本屋さん、代々木上原の幸福書房で見つけた。ちょくちょく行く店だった。本もさることながら、ここの店の魅力は仕入れが一般の取次システムだけに頼らず独自仕入れをしていることで、ここならではの建築やデザイン系の書籍が充実していること、他の分野の本も大型書店やネットにはないぼくの気を引く品揃えの面白い本やステキな本に出会うことであった。

「あった」と過去形なのは、実はこの幸福書房がこの2月に事もあろうに閉店廃業するからだ。
店主からこれを聞いた時は言葉に詰まってしまった。屋号の通りのたくさんの「幸い」にありがとうには変わりがないのだが、ここはここだけの他にない空間であり、訪れたぼくらの好奇心や創造力をかきたてる特別なところだったわけだった。

空間や場は時間も伴う。つまるところ、この先に他に代わる「幸い」はなく、周りの人たちから惜しまれるもぼく個人としても何ともやるせないのだが、手元にある幾冊かの本を眺めていると、「やるだけやった」と想像してどこか晴れやかな達成感という気分にもなっている。

あらためて、「白百」を読みつつ幸いというつややかな眩しさをこの小さな本屋さんに重ねてみた。