Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

真空をうがつ

気体と同じく、魂は与えられた空間すべてを占めようとする。収縮して真空を残すような気体は、エントロピーの法則に反する。とどめる、抑える、それは自己の内部に真空をうがつことだ。恩寵はみたす。だが、恩寵をうけいれる真空がなければ入ってこない。そして、この真空をつくるのも恩寵だ。
眼を閉じて鉛筆の先で机をなぞるときに鉛筆がわたしのためにはたす役割を、キリストのためにはたすこと。わたしたちを介して神が自身の創造を眺めるには、わたしたちの同意が必要である。わたしたちの同意を得て、神はこの驚異をなしとげる。眼前のこの机が神に見られるという比類なき幸運に恵まれるには、わたしが自己の魂から撤退するすべを知っていればよい。神は愛以外のなにものでもなく、愛以外なにも創造しなかった。

シモーヌ・ヴェイユ