Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

殯の森・河瀬直美

観客を子供扱いしない映画監督 !

監督+脚本+プロデュース:河瀬直美/撮影:中野英世/音楽:茂野雅道/美術:磯見俊裕

河瀬直美殯の森(もがりのもり)がカンヌ国際映画祭グランプリ受賞。コンペティション部門に正式ノミネートされていたが、どうなるのかと気になっていた。やりました。河瀬は10年前1997年カンヌ国際映画祭で作品「萌の朱雀」によってカメラドール(新人監督賞)をとったが、業界の周りや映画通からは、私小説的ドキュメンタリーの限界と叩かれることもあった。彼女のテーマは家族の離散や恋人との絆が解体する中で自己の存在確認ということが中心であった。実に彼女自身、「萌の朱雀」のプロデューサーと結婚し、離婚により姓を河瀬にして出直していた。あるインタビューで河瀬は「観客を子供扱いしない 」と云っているのは意味深い。自己同一の確認ではなく、自己の内の他者があって他者として作品を自己と同じ立ち位置で作っているということだ。それと同時<あるがままでの自己>も確かめているとも云っている。

私の中では、誰かにスポットを当てたものにすると制作する意味がなくなるんです。そうではなくて、平凡な登場人物の全員がそこで影響しあって存在している。そのことを確認するものにしたいんです。「自分」というものの存在を確かめたい。それが私の全作品の根底にある思いです。

http://www.innovative.jp/interview/2005/0316.php

http://122.200.201.84/interview/archives/no047.html

今回のストーリーは奈良県東部の山間地にあるグループホームの男と女の物語が背景となっている。 http://www.mogarinomori.com/story.html 主演のうだしげるはまったくの素人で役者に初挑戦、彼女の作品「火垂」感動、監督と居酒屋でたまたま会ったのが縁で、以後、身近な協力者として「沙羅双樹」では自宅を開放し支えたのを機に監督のオファーを受けたそうだ。今回も自らの生まれ育った地の奈良で撮っている。結婚と離婚そして養母の介護。再び結婚し出産、子育て。新たなにどのような<生と死の結び目>の視線が出来たのだろうか。カメラは『静かに時は流れて〜長崎の少女と写真家の歳月』の中野英世。封切りが待ち遠しい。