Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

失うこと・老いること・気づくこと

先日私の勤務する病院で患者のUさんが亡くなられた。鳶職の頭領だった方で、体の片方には見事な龍の刺青があった。どんな経緯の刺青だったかは分からない。空っぽになった病室になって幾日も立つが、長身の年老いた体に彫られたものが、ただの勇さだけでなく、人の生きてきたどうどうとした<オノレ>の証だったと思えて今も瞼に浮かんで離れない。安らかなご永眠を祈るばかりだ。

介護の現場で常に考えていること。老いること・失うこと・気づくこと。そしてボクが関わること。失ってもなお得るものがあるというように安穏とは云えない。見えなかったもの「老い」そのもの。<老いること>がこの世から隠されているんじゃないかな。もっと子どもの側に、わたしたちの近くに老いていく人がなくてはいけない。老いていく人の辺りに命を得たばかりの赤ちゃんが、青年が、反抗期のガキが、あらゆる人が、命の終末が見えるかたちで老いる人の側の日常にもっと居なくてはいけない。ボクらは人の手を借りてこの世に生まれ、人の手によって生を終えてゆく者としてあるだから。

http://d.hatena.ne.jp/mugisan/20071011