Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

ホット・ソイココアで「虔十公園林」

cocoa

世界は堅い。私たちはその堅いものを噛まねばならない。現実は確かにそのように思う。しかし、その世界に対して強い力だけに支えられて私たちは生きてないようです。実際はそうではないものによって支えられていることが少なからずあります。たとえば昨日、家人の落とし物を届けてくれた人の親切もそういうことが言えます。

今日の朝は寒かったのでココア・パウダーをカップに入れて煮詰めた豆乳を注いで、ホット・ソイココアを作ってみました。からだがふんわり温まります。

早起きしたので、宮沢賢治の虔十公園林を読んでみました。気持ちが解けます。これはホット・ソイココアのせいだけではないです。

賢治は推敲に次ぐ推敲の作者だと云うことですが、アタマで考え抜くという不自然さはありません。 我々の人間の限界を掬い上げていく賢治の心と深さが感じられます。ふんわり気持ちが温まります。堅い世界に見えるとも、実はこの世界は今という時間に幅をもっていて、この目には見えない知を超えた裾野の広い豊かさで成り立っている。もっと云うと、世界は杉の苗を700本植えた「虔十」の死後という時間を含む生命の振幅の大きさで出来ているのと賢治は言っているのでしょう。

これは確かなものでメルヘンではありません。現実は厳しいですが違う視点にたつと一縷の希望が湧いてきます。
さて、もう一杯ホット・ソイココアをおかわりして、仕事に出かけることにします。

虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)は、賢治が亡くなっ た翌年(1934年)に発表された短編作品。 賢治が知的障害のノーマライゼーションの可能性に言及した点で貴重な作品でありました。ありがたいことです。 宮沢賢治 青空文庫「虔十公園林」