2007春4・力を抜く
川の流れが一度せき止められた後、川の際の方から水は勢ひを増して同じ間隔で動きを上下に繰り返して、その力は次第に川面の辺り一面に緩やかに文を拡げている。自然にリズムがあるやふに、詩や歌の韻にも転がる響きがある。
さて、言葉に意味を求めずとも趣をもつた句に気持ちが解かれることがある。
みの虫の心決めたる高さにて 美馬 明
もとより蓑虫に感慨や思慮があるわけではない。蓑虫の動きをじつと様々に観視尽くしてゐた作者がやうやく何か描かうとした時、蓑虫が次ぎの枝に移らうと違ふ動きをしたにちがゐない。その思ひもよらぬ動きに作者自らも、おのれに粘らず作句自体にふと力を抜くことが出来たのだらう。やさしい眼差しの趣のある一瞬である。