Emmausブログ

人は見ね/人こそ知らね/ありなしの/われは匂ひぞ/風のもて来し

二つのエピグラフ

軽やかな鈴の音が聞こえる。あの向こうの電話機からなのだろう。夜も更けているがパチパチと焚き火が燃えさかり語り合う声が小さく響いている。しばしの静寂をぬってこちらに人影が現れた。受話器をとって「はい、はい」とだけ受け答えて机に何かをぴたりと…

亡羊記・トレイル・ラン

妹が逝ってしまって五日目の夕。 夜勤明け、わたしは 川沿いの18キロのトレイル・ランに出た。 きーんと張りつめた こがね色の大空を、 聴いている。きいている。 そのわたくしの裡に <大きな森の夜の背後>が聞こえた。 鹿は 森のはずれの夕日の中にじっと…

死者の書

初稿・死者の書作者:折口 信夫国書刊行会Amazonこの暑い時にこそ一冊の本をじっくり読み返すのもいいだろう。「死者の書」。「盆(盂蘭盆)とは、いつもの『私』から『ワタクシ』を取り去ることである」とある僧が話をしてくれた。なるほどだと悼むとはそういう…