ウビ・カリタスと直太朗の《夏の終わり》
「い・つ・く・し・みって何?」と子どもから訊かれたら、どう答えますか?
かつて、ザビエルがキリスト教を日本で宣教をはじめた折、「愛」ということが日本人に受け入れられ難いため、ザビエルは「愛」ということを「大切にすること、大事にすること」として言い伝えたそうです。
ていねいに大切に大事にしたいですが、わたしたちもいざ行うとなると、なかなか行い難い。
もう、ずいぶん前の話、ある夏の終わりだった。北浦和教会でのチャリティ・コンサートに行った時のことだった。聖歌隊によるグレゴリア聖歌あり、合唱あり、クラシック音楽曲。坂本九の曲までありと様々だったが、お年寄りから子供までと、とてもアットホーム仕立てだった。
個人的には合唱の立原道造作詞・木下牧子作曲の「夢みたものは」がよかった。それにヴァイオリンとビオラの「アメイジング・グレイス」もビオラの渋さがよかった。
休憩で幼稚園児の-親子の囁きが聞こえた。
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- ねぇ!いつくしみって何?
- さあ何だろうね?
- 何?
- いろんなみんながいるでしょう
- お母さんのいうこと聞く子 お父さんのいうこと聞かない子
- そのみんなをかみさまはつらいことや苦しいことを良くなるように救ってくだるの しわせになるようにしてくださるのよ
- ねぇ!いつくしみって何?
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- みんなそうなの ならわるい子にもそうするの?
- かみさまはわるい子はもうじぶんでは元にもどれないから神さまが手をかしてくださるの
- みんなそうなの ならわるい子にもそうするの?
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- おかあさんはどうだったの?
- そうね わるい子だった
- へぇ わたしもわるい子よ だいじょうぶよね
- たいせつにされているのよ
- いつくしみってすごい
- おかあさんはどうだったの?
最後に参加者と聴衆のみんなでそのテゼの歌「Ubi cáritas(いつくしみと愛)」を歌った。何度も何度も歌った。
「♭♪♪ いつくしみ とあいの あるところ かみともに ♭♪♪」
「♭♪♪ Ubi cáritas et ámor, ubi cáritas Déus íbi est. ♭♪♪」
会の終わり、その親子が席から立ち上がった。母親が子どもに話しかけた。
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- コンサートどうだった?
- でもわたしは、直太朗の「夏の終わり」がいい
- 涙がでる
- おかあさんはどうだったの?
- あの歌も好きよ!
- 「夏の終わり」の夏の祈りってすごいわ
- コンサートどうだった?
せせらぎのように時はすぎた。今もあの時の親子は元気にしているだろうか。幼稚園児で「夏の終わり」が好きだったあの子は大きくなっているだろう。わたしもあの直太朗の「夏の終わり」がいまも好きである。